介護記録システムを選ぶときに確認したい10のポイント

介護記録システムを選ぶときに確認したい10のポイント

介護記録システムを導入しようとすると、最初に気になるのは「どの製品がいいのか」ではないでしょうか。

しかし、機能が多いシステム、高価なシステム、有名なシステムが、自分たちの事業所に合うとは限りません。

大切なのは、「このシステムで、現場の何を変えたいのか」から考えることです。

厚生労働省も、介護ソフトについて、記録、情報共有、データ連携、タブレット・スマートフォンの活用など、幅広い業務を支えるものとして整理しています。

この記事では、介護・福祉事業所が介護記録システムを選ぶ際に確認しておきたいポイントを、10の視点から整理します。

  • 介護記録システムを何から比較すればよいか分からない
  • 現場職員が使いやすいシステムを選びたい
  • LIFEや介護情報基盤など、今後のデータ連携も考えておきたい
  • 導入後に「思っていたのと違った」となるのを避けたい

こうした事業所の管理職、ICT推進担当者、現場リーダーの方は、システム選定の判断軸として参考にしてください。

目次

1.まず「何を改善したいのか」を決める

介護記録システムを選ぶとき、最初に製品の比較表を作る必要はありません。

先に整理したいのは、現在の業務で何に困っているのかです。

たとえば、次のような課題があります。

  • 記録を事務所に戻ってから入力している
  • 同じ利用者情報を複数の書類へ転記している
  • 申し送りや情報共有に時間がかかっている
  • 記録と請求が別々で二重入力になっている
  • 紙の記録を後からパソコンへ入力している

同じ「記録業務を効率化したい」という事業所でも、困っている場所が違えば必要な機能も変わります。

厚生労働省の介護分野における生産性向上の取組でも、ICTを導入すること自体ではなく、業務上の課題を整理しながら改善を進めることが重視されています。

「新しいシステムを入れる」ではなく、「新しいシステムによって、どんな状態を実現したいのか」を最初に言葉にしておきましょう。

2.自分たちの業務に必要な機能がそろっているか

介護記録システムといっても、搭載されている機能は製品によって異なります。

利用者基本情報、アセスメント、ケアプランや個別援助計画、サービス提供記録、モニタリング、申し送り、請求など、日々の業務がどこまで一つのシステムで扱えるのかを確認する必要があります。

ここで重要なのは、単純な「機能数」ではありません。

たとえば、施設系サービスと訪問系サービスでは、記録する場所もタイミングも異なります。居宅介護支援であれば、ケアプランや給付管理、他事業所とのデータ連携も重要になります。

厚生労働省の「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集」でも、事業所のサービス種類に必要な機能を踏まえて介護ソフトを選定することが示されています。

「機能が多いか」ではなく、「自分たちの業務に必要な機能があるか」で判断しましょう。

3.一度入力した情報を何度も入力しなくて済むか

介護記録システムを導入しても、転記が残ってしまえば業務負担は思ったほど減りません。

たとえば、利用者基本情報を登録したあと、その情報がアセスメント、個別援助計画、サービス提供記録、請求などへ引き継がれるかを確認します。

厚生労働省も、利用者基本情報やサービス提供予定・実績などが自動連携され、記録から請求まで一気通貫で扱える機能を、介護ソフト選定時の確認項目として挙げています。

デモを見る際には、単に「この画面から記録できます」という説明だけで終わらせないことがポイントです。

「ここに入力した情報は、そのあとどこに反映されますか?」

この質問をすると、そのシステムが二重入力や転記をどこまで減らせるのかが見えやすくなります。

4.現場の職員が無理なく操作できるか

多機能なシステムでも、職員が使いこなせなければ意味がありません。

介護現場では、パソコン操作が得意な職員だけがシステムを使うわけではありません。新人職員からベテラン職員まで、日常的に操作できることが重要です。

たとえば、次のような点を確認します。

  • 画面の文字やボタンは見やすいか
  • よく使う機能まで何回操作する必要があるか
  • 利用者を間違えにくい画面になっているか
  • 記録途中で操作に迷わないか
  • 過去の記録を簡単に探せるか

こうした点は、カタログだけでは判断できません。

厚生労働省も、画面レイアウトの見やすさや操作のしやすさ、デモンストレーションや試用への対応を確認項目として挙げています。

可能であれば管理者やICT担当者だけで決めず、実際に記録を入力する現場職員にも操作してもらうことをおすすめします。

5.記録する場所に合った端末を使えるか

介護記録をどこで入力するのかも重要な判断材料です。

事務所のパソコンでまとめて入力するのか、居室でタブレットを使うのか、訪問先でスマートフォンから入力するのかによって、適したシステムは変わります。

厚生労働省の資料でも、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンでは、携帯性や画面の見やすさ、操作性などに違いがあるため、業務に合わせて検討することが示されています。

また、クラウド型のシステムを導入してタブレットを用意しても、施設内のWi-Fiが不安定であれば、現場では使いにくくなります。

ソフトだけでなく、次のような環境も確認しましょう。

  • Wi-Fiの通信範囲と安定性
  • スマートフォンやタブレットの台数
  • 充電場所
  • 端末の保管方法
  • 紛失・故障時の対応
  • 端末の更新や管理を誰が行うか

介護記録システムは「ソフト単体」ではなく、現場で利用する環境全体で評価することが大切です。

6.LIFEや介護情報基盤など、外部とのデータ連携に対応できるか

これから介護記録システムを選ぶのであれば、外部システムとのデータ連携も確認しておきたい項目です。

科学的介護情報システム(LIFE)については、厚生労働省から介護ソフトとのCSV連携に関する標準仕様が公開・更新されています。

また、介護情報基盤は、2026年4月1日以降、介護情報基盤との連携を含めた標準化対応が完了した市町村から、順次データ移行や情報共有が始まっています。厚生労働省は、2028年4月1日までに全市町村で介護情報基盤の活用を開始することを目指しています。

ケアプランデータ連携機能についても、2027年1月を目途に介護情報基盤との統合が予定されており、2027年4月以降はAPI連携によって介護ソフトからケアプランのデータ連携ができるようになる予定です。

そのため、2026年以降にシステムを導入・更新する場合は、「現在できること」だけでなく、今後の対応予定も確認する必要があります。

ベンダーには、次の点を確認しておくとよいでしょう。

  • LIFEとのデータ連携への対応状況
  • 介護情報基盤への対応予定
  • ケアプランデータ連携への対応状況・予定
  • API連携への対応予定
  • 対応に伴う追加料金の有無
  • システム更新が必要になった場合の対応方法

7.セキュリティと権限管理は十分か

介護記録には、利用者の氏名や住所だけでなく、病歴、心身の状態、家族状況など、多くの重要な情報が含まれます。

そのため、「クラウドだから安全」「大手企業だから安全」といったイメージだけで判断するのではなく、具体的な仕組みを確認することが大切です。

たとえば、次のような点です。

  • 職員ごとにアカウントを発行できるか
  • 職種や役割によって閲覧・編集できる範囲を変更できるか
  • 退職者や異動者のアカウントを停止できるか
  • 誰がいつ何を操作したか履歴を確認できるか
  • パスワードや認証を適切に管理できるか
  • 端末を紛失した場合の対策があるか
  • データのバックアップや復旧方法が決まっているか

厚生労働省は、介護情報基盤の利用も見据えた「介護事業所における情報安全管理の手引き」を公開し、安全な利用環境、ログイン・ログオフ、閲覧・入力・送信などの対策を整理しています。

セキュリティは「システム会社に任せておけばよい」というものではありません。

システム側の対策と、事業所側の運用ルールの両方を整える必要があります。

8.導入後のサポートを受けられるか

介護記録システムは、契約して終わりではありません。

むしろ、本当に重要なのは使い始めてからです。

「操作方法が分からない」「設定を変更したい」「請求前にエラーが出た」といった問題は、実際の運用が始まってから発生します。

厚生労働省の選定ポイントでも、問い合わせ対応、職員への教育・研修、導入後の定期的な支援、遠隔操作等によるサポート、災害時のバックアップ・復旧支援などが確認事項として挙げられています。

導入前には、次のような点を確認しておきましょう。

  • 電話、メール、チャットなど、どの方法で問い合わせできるか
  • 問い合わせ可能な曜日・時間帯
  • 導入時の職員研修があるか
  • 導入後も研修を受けられるか
  • 制度改正時にどのような支援があるか
  • 障害発生時の連絡先や対応方法

特にICTに詳しい職員が少ない事業所ほど、サポート体制もシステムの一部として評価することが大切です。

9.将来システムを変更するときにデータを持ち出せるか

導入するときには、どうしても「これから使うこと」ばかり考えてしまいます。

しかし、数年後に別のシステムへ変更する可能性も考えておく必要があります。

重要なのは、現在使用しているシステムから利用者情報や過去の記録を移行できるか、そして将来そのシステムをやめるときにデータを取り出せるかです。

厚生労働省も、介護ソフトを切り替える際のデータ引継ぎ支援を、事前に確認しておきたい項目として挙げています。

契約前には、次の点も確認してみましょう。

  • 解約時にデータを取り出せるか
  • どのファイル形式で受け取れるか
  • 過去の記録も出力できるか
  • データ移行に別料金が必要か
  • 契約終了後のデータ保存期間

「導入のしやすさ」だけではなく、「変更・解約のしやすさ」まで含めて選ぶことが、長期的には重要です。

10.月額料金ではなく「総額」で比較する

最後は費用です。

介護記録システムの価格を比較するときにありがちなのが、月額料金だけを比べることです。

しかし実際には、次のような費用が発生する可能性があります。

  • 初期設定費用
  • 月額・年額利用料
  • 利用者数や職員数に応じた料金
  • オプション機能
  • タブレットやスマートフォンなどの端末
  • Wi-Fi環境の整備
  • 既存システムからのデータ移行
  • 職員研修
  • 保守・サポート
  • 制度改正等に伴うアップデート

厚生労働省も、初期費用や毎月の支払額だけでなく、一定期間内の支払総額、オプション料金、アップグレード費用、無線LANや端末などの環境整備費用まで含めて検討することを示しています。

そのため、複数のシステムを比較するときは、「月額○円」という数字だけではなく、たとえば3年間や5年間利用した場合の総額で考えます。

また、価格だけでなく、そのシステムによって削減できる作業も考えてみましょう。

多少価格が高くても、二重入力がなくなり、記録時間や事務作業が大きく減るのであれば、事業所全体としては合理的な選択になることがあります。

デモでは「機能説明」より実際の業務を再現してもらう

システム選定では、複数のベンダーから説明を受けることもあるでしょう。

そのときは、メーカー側の機能紹介を聞くだけではなく、普段の業務を実際に操作してもらうことをおすすめします。

たとえば、各社に同じ条件で次の操作を実演してもらいます。

  1. 新しい利用者を登録する
  2. 利用者の当日の介護記録を入力する
  3. 前日の記録や申し送りを確認する
  4. 入力した記録を計画や請求など別の業務で利用する
  5. 記録を訂正する
  6. 過去の記録を検索する

同じ業務を各システムで実演してもらえば、「できる・できない」だけでなく、何回操作する必要があるのか、現場職員が迷わず使えそうかまで比較できます。

「一番高機能なシステム」より「自分たちが使い続けられるシステム」

介護記録システムを選ぶ際に、すべての機能がそろった製品を探したくなるかもしれません。

しかし、使わない機能が大量にあっても、現場の業務が改善されるわけではありません。

反対に、必要な機能が絞られていても、現場で記録しやすく、転記が減り、職員間で情報共有しやすくなるのであれば、大きな効果を生む可能性があります。

厚生労働省も介護ソフトの選定について、「機能面」「サービス面」「価格面」の3つの観点から検討することを示しています。

製品比較より先に、自分たちの事業所の業務を見直すことが重要です。

まとめ|システム選びは「製品選び」ではなく「業務づくり」

介護記録システムの導入は、紙をデジタルに置き換えるだけのものではありません。

記録する場所やタイミング、職員間の情報共有、計画から記録・請求までの流れそのものを見直す機会になります。

そして現在は、LIFEだけでなく、介護情報基盤やケアプランデータ連携など、介護事業所を取り巻くデータ連携の環境も変化しています。

だからこそ、システムを選ぶときは「どの製品が一番いいか」から始めるのではなく、「私たちの事業所は、どんな業務に変えていきたいのか」から考えてみてください。

目的が明確になれば、必要な機能、端末、運用方法、費用も見えやすくなります。

介護記録システムは、導入することがゴールではありません。

職員が無理なく使い続けられ、記録や情報共有の負担を減らし、その分を利用者への支援に向けられること。

その状態をつくれるかどうかが、システム選びの大切な判断基準です。

主な確認情報源

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